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Vol.19

ノドにつまった!


この代々木の森通信を2月毎に書くつもりが、半年も経ってしまいました。開院以来のベテランスタッフが結婚退職して遠方へ行ってしまったので、引継ぎなど院内がゴタゴタしていたというのが言い訳です。さて今回は、当院へ通院中の患者さんから誤飲・誤嚥について書いte欲しいとの御要望があり、まずは喉頭異物のお話です。

ノドは空気と食べ物の通り道です。動物によっては空気の通り道と食べ物の通り道が別々の種もありますが、特にヒトはこの二つの通り道が交差し、口からも呼吸のできる複雑な構造となっています。ですから物をゴクンと飲み込む(嚥下)時には息をとめる必要がります。考えてみれば、同じノドを通っても空気は肺へ、食べ物は胃へちゃんと選別されているのは凄いことだと思いませんか?

まず、嚥下(ゴクンと飲み込むこと)について説明します。嚥下時には意識的に、或は反射的に、複数の動作が連続して必要です。まず飲み込む準備(口腔期)です。口の中の食べ物を歯で噛み砕き(咀嚼)ながら唾液と食べ物を混ぜて、飲み込みやすい形状にしていきます。これには唾液分泌、咀嚼筋、舌、顎関節、歯列、噛み合わせなどが関係してきます。次にゴクンと飲み込む咽頭期です。食塊がノド(咽頭)に入ると反射的に気道が閉鎖し、食道の入口が広がり、口蓋垂(のどちんこ)が絞まって鼻への逆流を防ぎ、舌で押し込むようにして食塊を食道に流し込みます。最後に食道が搾り出すようなリズミカルな動きで食塊を下へ運び(食道期)、胃へ届けます。たかがゴクン、されど実際はかなり複雑な運動がタイミングよく連続的に起こっていることがお分かりいただけたでしょうか?

ノドから空気専用の通路へ分かれる入口が喉頭です。その先は下気道と呼ばれる気管や肺です。では、食べ物がノドから喉頭や気管に入らない仕組みはどのようになっているでしょうか?まず喉頭には蓋(喉頭蓋)や扉(声帯)があります。嚥下の咽頭期に喉頭全体が持ち上がります。のど仏とは喉頭の軟骨ですから、のど仏の動きが喉頭の動きというわけです。ゴクンとすると喉頭が上に素早く上がって、普段は立って開いている喉頭蓋が倒れて喉頭全体に蓋をします。と同時に左右にV字型の声帯というヒダが中央に寄って閉じます。もし食べ物や飲み物が間違って喉頭や気管に入って誤嚥してしまっても、反射的に咳き込み、異物を吐き出すようになっています。

しかし高齢者などで知覚が低下して反射が起こりにくくなっていると、嚥下動作が起こりにくく、また誤嚥しても咳が出ないこともあります。日本では餅をノドに詰まらせる高齢者が後を絶ちませんが、知覚が低下していると嚥下が起こりにくく、飲み込む筋力も低下しているためです。更に、唾液の分泌が減って咽頭粘膜が乾燥して餅がくっつきやすく、また歯が悪いと咀嚼も充分できないこともその要因です。乳幼児や学童では知覚は鋭敏でも咀嚼が不十分なうちに飲み込もうとしてノドに詰まってしまうことがあります。最近では小学生がパンを詰まらせたり、幼児が丸のままのプチトマト詰まらせて不幸な転帰を辿った事件が記憶に新しいですね。嚥下では飲み込む前(口腔期)に、食べ物を飲み込みやすい状態にすることも大切なのです。

ノドの奥に指を突っ込んでも「おえっ」とならなければ、知覚が低下している証拠です。お餅は止めておいた方が無難です。パンなど乾いたものの飲み込みにくさを感じたり、お茶などでむせやすいのも注意すべき兆候です。どうしてもお餅を食べたいなら、先に水分を飲んでノドを湿らせ、一口を小さくして、よく噛んで食べてください。自分で判断のできない人に食事を与える場合は、その嚥下能力に合わせた形状にしてから与えましょう。幼児なら、一口では入らない大きさにして自分で噛み切るようにさせるか、一口大なら咀嚼しやすい大きさ・形・硬さにしましょう。いずれにしても、食事はしっかり座って(姿勢も嚥下には大切な要素)、感謝して(食事に集中して)、よく噛んで(消化の助けにもなりますね)食べることを習慣付けたいものです。

もしノドに何かがつまってしまったら、指でかき出す(この時、噛まれないように奥歯にタオルなどをかませて口が閉じないようにしましょう)か、小さい子供なら逆さまにして胸背部を叩いて出します。大人の場合は逆さまにすることは難しいので、ハイムリック法といって両手の握りこぶしでみぞおちを下から上に押し上げて、肺の空気を勢いよく出すことで異物を取り除く方法があります。

まとめ

・     食事はしっかり座って、感謝して、よく噛んで食べましょう。

・     ノドの奥に指を突っ込んでも「オエッ」とならなくなったら、
お餅は危険です。

・     幼児は咀嚼がまだ上手ではないので、
大きさ・形・硬さに注意しましょう。

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