不登校の原因はいろいろあるが、解決の方法が一通りではなく、急に不登校になると親はどうしたらいいのか分からず途方に暮れてしまう。
不登校の原因にOD(起立性調節障害)がかなりの確率で存在する。ODは、思春期の自律神経障害が原因と言われている。低血圧で朝起きられないという事で発症することが多い。そのため徐々に遅刻し出し、しまいには不登校になってしまう。最初は怠け癖だと思って親は必死にたたき起すのだが、頭痛、吐き気、腹痛といった具体的な症状を訴えだす。特なる症状がなくただ全身倦怠感の事もある。最初、本人は学校に行こうとするのだがどうしても体が言う事をきかない。本人も辛いのだが周りの人にそれを理解してもらえないのでますます落ち込んでしまう事になる。しまいには起き上がってもふらふらしてめまい症状を訴えるようになる。午後になって血圧が上がってくるとようやく行動ができるようになるが、遅刻ばかりしていて学校に行くのをためらってしまう。
一方、新型コロナウイルス感染の後遺症に、『
Bスポット治療』(鼻咽腔に薬を塗布する治療/EAT治療/鼻咽腔擦過療法)が有効であることが明らかになってきた。鼻咽腔(鼻の突き当り)は自律神経がネットを作っており、そこに炎症が起きると自律神経に起因した種々の症状が発症する。コロナ後遺症にこの治療を施すと好結果が続出した。さらに最近、翼口蓋神経を電気刺激すると倦怠感や頭のモアモア感が改善するという論文が発表された。そこで翼口蓋神経のある鼻咽腔の上方まで範囲を広げて薬で塗布刺激してみた。するとものすごい痛みを訴えるが、後遺症の倦怠感や頭の中のモアモア感が劇的に改善したのである。
ある時コロナ感染後倦怠感で学校に行けないという子がやってきた。彼は不登校になっていたが心の中では学校に行きたいと切望していた。痛い治療も最初はしり込みしていたが、何とか学校に行きたいという熱意があったのでこの翼口蓋神経領域を含めての
Bスポット治療を受け、学校に復帰を果たした。その後来院したもう一人のコロナ感染後不登校になった中学生もあと一息で学校に行けるところまで回復した。
まだ2例の経験しかないがODによる不登校児童の治療法として翼口蓋神経刺激を含めた
Bスポット治療は福音になる可能性があると思われる。
獨協大学名誉教授
代々木の森耳鼻咽喉科顧問
渡辺 建介